月光の蝶ともなりて降りにけり
花蘂を掃くもこだわり胸にあり 
新幹線一気に抜ける花菜畑
駅頭の菫のもとに妻を待つ
忘れ得ぬ人の逝きにし春銀河
花梨の摘花始まる甲斐盆地
頬覆ひ取れば佳人や花吹雪
鳶の笛花蘂掃いて小半日
涅槃絵に確と見付けし吾が未来
花吹雪夢を未来に託しては
振り向きて鏡を見れば花吹雪
早春の淀の堤をひた走り
少年僧秘かに牡丹掃きにけり
逆上がり助けてやれば東風の朝
みどりごの靴脱げ易くチューリップ
入学の子の母を残して走りけり
入学生春嶺望み人想ふ
荒東風や歯科医のドリル軋みけり
ゆらゆらと陽炎に見し逝きし父
夕東風や海女の憩ひの珈琲一椀
大漁旗掲げし古城に春の鳶
荒東風や隠れ信徒の銀クルス
絵手紙の先生配る桜餅
東風吹けば一瞬崩る傀儡かな
托鉢の鉄鉢に降る桜蘂
花の雨托鉢僧は微動せず
花の雨托鉢僧は立ちつくす
自転車の何故か軽やか菫の野
ズボン裾折りし少年入学す
落花の夜ひそかに沸かす珈琲かな
覚めてより落花の雨と知りにけり
襖引く音に散りけるチューリップ
昼餉後の夢より覚めて花曇り
カーテンのそよげば崩るチューリップ
白桃の眺ぬるほどに小半時
蓮池にモネのさざ波煌めきぬ
ままごとの皿に溢れし藤の花
背中から声掛けられて蓬摘み
花蘂を数多落として夜の雨
卯月尽靴下一足破れては
花蘂を鋤き込んでいる学校園
杖付けど胸にいだきし藤の房
合歓の花みどりご寧き深眠り

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