短歌コーナ
歌ひてもオクターブ上下するこの人それに気づかざりけり
戦災で消えしふるさと地図見れば知らぬ地名となるは淋しき
人生は一期一会と思へどもいとしき人に亦も会ひたし
はらからの征きて帰らじ終戦日またも返りて胸を痛める
あるときは努力根性はやりしがベクトル違ふ努力虚しき
ふと降りし駅に道に迷ひて聞きたればみちのく乙女やさしく答ふ
八雲立つ松江の城の空高く鳶の笛さへゆるりと廻る

俳句コーナー
髪洗ひ見るものすべて新しき
短夜の昼顔などかうとはしき
赤蜻蛉沼から生まれ沼育ち
みずすまし数へて母の帰り待つ
斑猫や吾が青春の社会主義
葉薊にかすり傷してやや憂ひ
葉先より朝明け来たる水芭蕉
山梔子の崩れし気配闇深き
天なぜるポプラ大樹の若葉かな
蔓薔薇に実あまた付き青夕立
青蛙聞きつ入るは野天風呂
をみなには無き喉ぼとけ冷やし酒
髪洗ひ梅雨の湿りを流しけり
潮騒や凌霄(のうぜん)絡む春夫邸
昼顔の砂浜あまた悲話ありぬ
水蕗に湧き水ことりことりかな
螢火を母の魂とも思ひけり
紫陽花の交番に有る不在札
猫眠る車の下の小陰かな
鰻屋の特に大きなうの字かな
茶の丘の起伏たおやか夏の月
水平線微かにも見や鯖火かな
みずすましさざ波抑へ浮きにけり

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