目瞑れば枕木燃ゆるそのなかに逃げし戦の炎忘れじ
死の旅へ出征兵士見送れる勇ましき歌耳に残れる
麦秋に数多の家を引き崩し火止めとなせし戦忘れじ
思ふれば数多の兵は飢え細り泥水飲にて果てにかるかも
ひもじさに青梅食みし疎開の子今生きのびて朝に泳げり
終戦の玉音放送聞きをれば汗と涙に濡れし思へ出
炎熱の路地にへたりて携帯のメール打ちをる少年数多
凍りける鉄の如きの土割りて骸を埋めしかなたの日々よ
病院の前を通れば悲しみの母の逝きたる部屋を思ゆる

稲雀群なしてをり毛越寺
盆太鼓隣部落と競ひけり
廃校となると噂や法師蝉
夕立去り一つグラスの破片見し
棟上げや幣にさやかな風来たる
扇子置きやおら題詠投句せり
夕闇が明らかにせし白扇
甲斐駒の秋なる雲に分け入りぬ
かの人のTシャツ何時も真白にて
未熟児のすこやかにして稲の花
白団扇露天風呂にと忘れあり
祖霊いま帰りし気配走馬燈
稲の花今も信ずる未来かな
選漏れの句評となりて秋の蝶
噺し家の秋の扇の変化かな
跡継ぎの去りし青田を独り守る
浜木綿や民宿女将海女ことば
避暑宿の暮れても未だ蕎麦の花
疎開の子母恋ひの歌百日紅
今年また試験に落ちて秋風鈴
妻留守の秋を灯して良き読書

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